猫の恩返しと耳をすませばの関係は?ハルの中の月島雫の中の柊あおい

金曜ロードショーで「猫の恩返し」が放送されますね!

この作品、読むほど深い味わいのある背景を持っています。

「猫の恩返し」と、もうひとつのジブリ作品「耳をすませば」は、柊あおいさんという少女漫画家さんを介してとても深い関係性があります。

2作品の主人公を追っていくと、妄想オチ?のようになるんです。

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猫の恩返しのハル

ごく普通の女子高生の「ハル」は、友達とラクロス部から帰る途中、トラックに轢かれそうになった猫をラケットで掬って助けます。

その猫は2本足でぴょこんんと立ち上がり、お礼をして去っていきました。不思議な猫の正体は、猫の国の王子である「ルーン」だったのです。

後日、ハルの前に現れた猫の国の第2秘書「ナトル」により、ハルは「猫の国」に招待されます。猫の国の王である猫王は、ハルをルーンの妃にしようと目論んでいるのでした。

太った猫ムタによって猫の事務所に導かれていくハル。その途中で猫の男爵バロンと、彼の相棒であるカラスのトトに出会います。

さてこのバロンですが、ものすごくかっこいい猫男爵。↓↓↓

ハルはまあいい子ではあるのですが、毎日をなんとなく生きて、自分のことを後回しにするようなお人好しすぎる点が欠点。

・寝坊して学校に遅刻する。

・友達のために掃除当番を引き受ける。

・好きな男の子に彼女がいることが分かっても、自分には何も出来ないと身を引こうとしている。

なぜ凡庸なハルという女の子が、猫の国の王子の妃(つまり「王太子妃」ですよね!)になんて選ばれたのかが最初はわからなかったのですが、「物事を深く考えない、自分の意志を強く持たない流されやすい女の子」だったからではないでしょうか。

自分の大事な人生の時間を、無駄遣いした生き方をしているんです。

ムタは「猫の国は自分の時間が生きられない奴が行く場所だ」と言っていますが、この条件に当てはまっていたからこそ、ハルは選ばれ、連れ去られたのでしょう。

この作品のヒーロー的位置にあるバロンも「ナトルの誘いは怪しい」と指摘していますので、この作品の中において猫に選ばれ、猫に連れ去られるというのは、少なくとも人間にとってあまり名誉なことではありません。


つまり「俺たちにふさわしいダメ人間」に認定されているのと同じなんです。

猫ってそもそも、気まぐれな生き物ですよね。毎日毎日を自由に気ままにのーんびり生きてる。実に贅沢優雅に時間を使っています。

こういう猫の国に連れ去られることは、そういう生き方にふさわしい人間とみなされていること。

バロンは、こういった自堕落?な猫の国とは、一線を画した生活をしています。

「君はついてる」

(バロンが入れたスペシャルブレンド珈琲を飲んだハルに向けての一言。笑顔が素敵すぎる)

「あいにく、不自由な生活も気に入っているのさ」

(こてんぱんにやっつけられた猫の王の負け惜しみに対して言ったセリフ)

「失礼する!」

(仲間の救出に向かうバロン。一刻を争う事態でもバロンは辞去の挨拶を忘れない)

「しばしの別れ!」

(ハルとの別れの言葉。さようならでもなくまた会おうでもなく、こういう言葉遣いが紳士すぎる。

言葉のひとつひとつに、「現実の毎分毎秒を豊かに生きる」バロンの毅然とした態度が垣間見えます。

美味しいコーヒーを入れ、毎日の生活を大事にして、他人を気遣う。だからバロンは猫の国には住んでいないのでしょう。

しかしハル……「王太子妃」クラスにまで選抜されるくらい猫の国にふさわしいとみなされるって、どれだけふわふわした思考をしているのだろうか、と思います。

ちやほやされて、猫化がどんどん進む場面が映画のクライマックスで描かれていますが、このシーンが意味することはハルの現実逃避が進んでいる点です。

「猫の国もいいかな」「現実世界なんてどうでもいいや」

この考えが、どれほど取り返しのつかない結果に結びつくのか、考えもしないのです。

ヒロインの姿が変化していくのは『ハウルの動く城』のゾフィーも同様ですが、彼女はラストでちゃんと自分を肯定し、成長して、本来の若い姿を取り戻しています。

が、がっ!ハルにはそれがない!!

ハルはラストで「猫を助けたことも悩んだことも、ぜんぶ自分の時間だったんだ」と言ってめでたしめでたしなのですが、なんかカタルシスがない。

「うおおお、よかったねハル!」という感じでくるものがない、もしくは伝わりづらい。

その理由としては、「猫の恩返し」はジブリ作品と銘打っているものの、

・原作者は柊あおいという少女漫画家。宮崎監督ではない。

・監督はジブリ社員でもない森田宏幸氏。

当時はジブリ内に長編映画を任せられる適当な監督がおらず、「となりの山田くん」の応援スタッフだった森田氏に監督業を依頼。

・ジブリは「千と千尋の神隠し」でスタッフ不足だったため、外部会社に制作を依頼。

といった大人の裏事情が錯綜しており、純正なジブリ作品とはとうてい言えません。

だからちょっと、こういった「噛み足りない映画」になってしまったのかな・・・・・・。
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「猫の恩返し」の作者である「耳をすませば」の月島雫

(c)柊あおい
さて、どこか消化不良の構成になった「猫の恩返し」ですが、物語である以上、原作者がいます。

もちろん「猫の恩返し」原作者は「柊あおい」という現実にいる少女漫画家さんですが、物語設定的には、「月島雫」という劇中劇的裏設定があります。

そうです、ジブリ映画「耳をすませば」のヒロインです。

「猫の恩返し」と「耳をすませば」には、いくつかの共通点が見られます。

・バロン

言わずと知れた、バロン男爵。

「耳をすませば」では、おじいさんの店の「地球屋」に置かれている人形にすぎません。

「耳をすませば」のバロン人形には、カップルとなるメス猫の人形がドイツで作成されていましたが、第2次世界大戦で行方不明になってしまってます。

バロン人形は、自分の花嫁となる猫人形が日本のおじいさんのお店に来る日を、今か今かと待っている、ロマンチックですが物悲しい設定があります。

「耳をすませば」のバロンは、動き回っていますね。

自分の花嫁については映画では言及されていませんが、紳士的な態度はバロン人形のイメージそのものです。

・ムタとムーン

デブ猫です。

「猫の恩返し」ではムタと名乗ってハルを「猫の国」へと連れて行きますし、「耳をすませば」ではムーンと名乗って道案内をするように、雫をおじいさんの店に連れて行きます。

映画「耳をすませば」の中で、作中の月島雫は、小説家を目指して頑張っています。

この中で、月島雫は妄想の中で何度もバロン男爵を登場させています。

映画のラストは、月島雫が本格的に小説を書き始めるシーンがありますが、この映画「耳をすませば」の公開が1995年。この時、彼女は15歳。

そして映画「耳をすませば」の公開が7年後の2002年。月島雫は22歳になってます。

彼女が中学生の頃から書きはじめていた物語を、プロの小説家になってはじめて公開した小説が「猫の恩返し」ではないか、と言われいるのです。

このことは、ジブリから公式の発表があったわけではありません。

しかし、映画の中の女の子が書いた作品が、現実世界で7年という時間が経った後に映画として公開されるなんて、とても素敵な仕掛けだと思います。

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(c)柊あおい

ところで「耳をすませば」については、私は映画よりも原作の漫画のほうが好きです。


かなり強いタッチで元気に描かれたキャラクターが、私は好きでした。

ところで雫ごめん、管理人はあなたの書いた小説・「猫の恩返し」、あんまりおもしろくなかったです…。

原作でいちばん重要なバロンのお嫁さん人形はどうなったの?!

管理人はこの疑問のためだけに「猫の恩返し」を鑑賞したのですが、何一つ触れられておらず、がっかりしました……。

次回作に期待してます! いつ出るの?(笑)

「猫の恩返し」の作者である「耳をすませば」の月島雫の作者である柊あおい

(c)柊あおい

で、この「猫の恩返し」の作者(と思われる)月島雫がヒロインの「耳をすませば」の作者である柊あおいさんについて紹介します。

柊あおいさんは集英社の少女漫画月刊誌『りぼん』で一世を風靡した少女漫画家さんです。

代表作としては知る人ぞ知る『星の瞳のシルエット』と『銀色のハーモニー』。

連載時は池野恋さんの「ときめきトゥナイト」と人気を二分して大人気でした。

『耳をすませば』は、この両代表作品の間に1989年に発表されました。

WIKIでは『耳をすませば』は人気が出ず、当初長期連載を想定していたが連載4回目で終了したと書かれますが、当時のりぼんの方針からして、長期連載終了の次は3回くらいの短期連載を挟む感じだったと記憶しているのですが、違うのかな。(私は当初から「予定通りの4回終了」だと思ってました)

しかし、この作品を宮崎駿監督が気に入り、5年後の1995年にまさかの映画化。

雫やバロンがスクリーンの中で動き、「猫の恩返し」という孫作品まで生まれたのです!

なんかすごいですね、柊あおいさんの中で生まれたキャラクター(月島雫)が、またその中でキャラクターを生み(ハル)、それぞれ映画になりました。

表には出ないこういった裏設定・都市伝説を、映画登場キャラの共通項や時系列、キャラの傾向を考えてつなげていくのって、とっても楽しいですね。

【余談】

管理人はコメディタッチの「ときめきトゥナイト」派だったので、「星の瞳のシルエット」のキャラ達には、いつまでちんたらぽんたらほれたはれた右往左往しとるんじゃさっさと選んでくっつけしっかりしろ正気に戻れ!!と毎号思っていました^^;。

ですので、柊あおいさんのかなりくっきりはっきりした絵柄の「耳をすませば」は、とても好きだったのです。

「星の瞳のシルエット」のその後編は出ているので、「耳をすませば」も描いてくれないものでしょうか。
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