2018年9月6日の北海道胆振東部地震の発生直後、東京都から厚真町など5町に乳児用の液体ミルク1050本が送られました。
しかし、そのほぼ全量が、使われずに保管されていたというのです。
震源地近くの町村は、つい最近まで断水しており、給水車が朝晩出動していましたが、粉ミルクは熱湯に溶いてから冷まして使用するもので、水と水を温めるエネルギーがなければタダの粉。
都市部ではガスは使えましたが、震源地近くの町村はその両方を確保できず、あの暗闇の中、赤ちゃんがを抱えたお母さんたちの心細さはいかほどのものだったでしょうか。
この液体ミルクはフィンランド製で、東京都から支援物資として送られたものです。
しかし、道の判断で「国内で使用例がないから使わないほうがいい」と通達され、その連絡を受けた各町が使用を止めた形ですが、実際は2016年の熊本地震で使われていたというオチがつきました。
開栓してすぐ飲める液体ミルクは、災害時は特に利便性が高いものですが、断水に苦しむ住民に周知されることなく、備蓄に回ってしまったとのことです。
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目の前の赤ちゃんより自分たちの保身が大事だったらしい
↓↓↓実際の製品がこちらです。
この製品は、駐日フィンランド大使が2016年の熊本地震の時、日本フィンランド友好議員連盟の小池百合子会長とともに熊本を訪れ、蒲島知事に直接手渡した液体ミルクです。
「この小さな行為が熊本の赤ちゃんの栄養源となるばかりか、遠い北欧の国も被災者の方々を決して忘れてはいないというメッセージになることを心より願っています」という暖かい一言を添えて、無償で提供してくれました。
やっぱりフィンランドが自信を持ってオススメする製品だと思うんですよこういう時の品物って。なんせ大使のメンツがかかっているわけですからね。
北海道職員、フィンランド大使の厚意を無にしましたよ。すごい度胸ですね。
調べると、液体ミルクは海外では普通にスーパーに売られており、ふたを開けて飲ませるだけの便利な商品として愛用されています。
しかし日本国内ではまだ製造・販売されていないため、道職員に「この液体ミルク、使っても大丈夫ですか?」と質問されたら、お医者さんは「国内では流通していないので前例がありませんのでわかりません」と回答するしかありません。
いくら専門的な知識を持つ医者でも医学的な判断はできなかったでしょう、外国のものなのですから。
私が不思議なのは、「国内で使用例がない」という医者の回答が、なぜ「だから使わないほうがいい」という理由にそのままつながってしまったのかな?ということ。
この医者の回答と、判断の間に、現場の判断はなかったのでしょうか?
そもそも、使用例がない(実際にはある)から使用しないという、この理由が通ることが理解できません。せめて、他の国で健康被害が発生したとか、最低限の言い訳があるのでは。
道庁側から被災自治体に送付されていた文書は?(追記1)
<出典:北海道地震での液体ミルク騒動について>
冒頭に大きな文字で「日本では使用例がなく、衛生管理が難しい製品ですので、使用しないよう住民・関係者へ呼びかけをお願いします」と、使用の自粛を求める内容がはっきり書かれていました。
この通知文書を受け、被災自治体の担当者は「1本も使用しない」対応に移りました。
↓↓↓
<出典:KYODONEWS>
安平町の職員は、「道からの説明を受け、誤って提供されないようにした」と、このように張り紙をしています。
んで、北海道庁は、地震後いちど「液体ミルク使用自粛を呼びかけた事実はない」と報道を否定しているんですが、探してみたら上の文書を取り寄せた人いましたので、転載します。
2週間後に修正文書を送っていたけれど(追記2)
地震は9月6日でしたが、北海道庁は9月19日には修正文書を配布していたとのこと。
× 使用しないよう住民・関係者へ呼びかけをお願いします。
○ 使用に当たっては、保健師・栄養士へ相談するように住民・関係者へ呼びかけをお願いします。
そうとうバタバタしていたのは仕方ないと思いますが、修正までに2週間も経過していたというのは、ちょっと遅いかな。
一番大事な震災直後の状況で使えないと意味ないと思います。
基本的な認識不足があったという点は否めませんし、あとは震災直後のガタガタの状況で、保健師や栄養士がすぐつかまるのかという疑問が残ります。
この点は、平時にアレルギーの有無を調べておくなどの予防対策が必要になるでしょう。
東京都は日本語の取説も添付していた
東京都はていねいに、1箱ずつに日本語に翻訳した取扱説明書も添付していたのです。
おそらく内容は、
・開封後すぐに使用すること
・飲みきれなかった分は保存せず捨てること
・アレルギーを持っている赤ちゃんには使用を控えてください。
このような当たり前のことが書かれていたと推測できます。
お医者さんの太鼓判はなくても、道職員より優秀な天下の東京都が「使ってください」「使ってもOKですよ」と言っていたのです。
東京都から送られてきたこの液体ミルクを使わなかった理由が、「被災地では他に代用できるものがあり、十分間に合っていたため」というコメントであれば何の問題もありません。
慎重を期して医者の先生に聞くのもいいですが、「前例がない」ということ自体が不安だったらGoogle先生か東京都職員に聞けばよかったのに……。
道職員はその説明書を読まなかったのか読めなかったのか……いえその前に、東京都が何か赤ちゃんに与えられない危険なものでも送ってくると思ったんですかね^^;?
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液体ミルクって何?
乳児用液体ミルクを簡単に言うと「フタを開ければそのまま飲める乳児用ミルク」です。
調べると、2018年8月から、日本における乳児用液体ミルクの製造・販売が解禁されています。
これまで日本で粉ミルクしか発売されていなかったのは、粉ミルクを含め、牛乳、ヨーグルトやアイスクリーム、脱脂粉乳などの乳製品にかかる法令は存在していたものの、単純に液体ミルクという商品について制定されている法律がなかったから。
『乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(通称は乳等省令)』によって製造方法や規格が定められていますが、それが今回、新たに乳児用液体ミルク(調整液状乳)に関する項目が追加されました。
解禁ほやほやの省令がこちら!
↓↓↓
乳及び乳製品の成分規格等に関する省令及び食品、添加物等の規格基準の一部改正について
簡単に説明すると、
・牛乳にビタミンなどの栄養分を加えたもので、成分は粉ミルクと同じ。
・常温保存が可能
・衛生面の基準については厳しく確保される。
など、かなり厳格です。さすがメイドインジャパン。
液体ミルクについてはやっとこういう基準ができたばかりだったので、まだまだ地震時には海外からの輸入品に頼るしかありませんでした。
その法律が改定され、国内の企業が製造に着手していいですよーと言われたのが、先月の2018年8月なのです。
日本製の液体ミルクは、まだ製造されておりません。
1995年に起きた阪神・淡路大震災の際にも、液体ミルクの必要性は話題になりましたが、あれから23年経っても、液体ミルクは日本で製造・販売されていませんでした。
ここまで液体ミルクの認可が遅れた理由は、粉ミルクメーカーの利権がからんでいると言われています。
その間にも、津波や地震は各地で頻発し、多くの災害で避難所生活を強いられた赤ちゃんを持つお母さん達が大勢いました。
災害が起こるたびに、海外からの支援により支えらえていますが、災害大国と言われる日本では、液体ミルクの必要性は高いと考えます。
また、海外製品の液体ミルクの保存期間は半年ほどと長く、災害時の保存食としても役に立つので、震災時にこそ重宝する栄養源なのではないでしょうか。
未開封であれば長期常温保存可能、蓋をあければそのまま飲ませることができて、水やお湯も必要なし。
アレルギーなども懸念されますが、災害時にはすぐに病院で診察してもらえない可能性がありますし、災害時には粉ミルクが近くにあっても哺乳瓶が消毒できません。
国産の液体ミルクは2019年以降
残念ながら、まだ日本製の液体ミルクは開発段階で、販売はされていません。
生産ラインの確保、品質保持などの基準をクリアしなければならないので、実際店頭に並ぶのは早くても2019年以降になるようです。
アメリカ製のものは以下のものになります。
↓↓↓新生児用8本セット
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↓↓↓乳児用6本セット
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少々割高ですが、とにかくミルクを作る手間が省けることと、開封前であれば長期保存が可能、もちろん衛生的と非常に便利。
共働き世帯も多くなっている昨今、使えるものは使うようにしたほうがいいと思います。
まとめ:一番必要な時に使用できない対応できるよう改善を
液体ミルクは、災害時にこそ有効です。
日本ではいまだに母乳信仰が強いのですが、災害に遭ったお母さんたちの中には、ストレスで母乳が出なくなる人も多いです。
9月の北海道とはいえ当時はとても暖かかったので、食べ物はすぐに傷んでしまいました。
そんな時、東京都が「今おなかを空かせている赤ちゃんに飲ませてくれ!」と送ってくれたものです。
液体ミルクの是非を問うにはいいきっかけとなりましたが、それでも初動で以下の対応をしたのは事実です。↓↓↓
・道から「使うな」と通達がいった
・しかも理由が「前例がない」
安全じゃないもの勝手に送られて迷惑してる!くらいに読めます。
なじみのない飲料に対する抵抗感の払拭はこれからの課題ですが、それにしても「とても住民に提供できる物ではない」という説明は、フィンランドにも東京都に対しても、たいへん失礼なことです。
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